かつて女の子だった人たちへ
「レイキ、たくさん練習したでしょ。歌もうまいんだね」
「俺、あんまり歌えてなかったよね。ダンスも下手でさ」
「そんなことないよ。伸びしろめっちゃある」
「それ、褒めてないでしょ! もうメリーさんってば」
「褒めてるよぉ」

レイキだ。レイキがここにいる。アイドルの格好いい姿を見せてくれ、コンカフェ時代みたいにお喋りもしてくれる。
チェキを5枚、いろんなポーズで撮った。並んで可愛いポーズをしたり、大きなハートを作ったり。芽里は胸がいっぱいになった。

「これからも応援するからね」
「ありがとう、メリーさん!……あのね」

レイキがこそっとささやく。

「ステージに立つまで、すごく怖かったんだ。不安っていうか。俺ちゃんとできるのかなあって。でも、メリーさんの姿をステージから見て、めちゃくちゃ安心した」

リップサービスだと思いながら、頼りにされていたことに涙が出そうになる。

「私はレイキのお姉ちゃんみたいなものだからね」
「お姉ちゃんみたいだけど、大切な人でもあるよ」

そう言って、レイキは照れくさそうに笑った。

「楽しんでもらえるように、俺、もっと頑張るね」


特典会が終わり、唯と食事をしてから家路についた。鞄の中には9枚のチェキ。宝物が増えてしまった。
今日、推しがアイドルになった。推しが最高の瞬間をくれた。
この最高を一緒に更新していきたい。

「これからも推すからね。レイキ」


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