かつて女の子だった人たちへ
さらに、特典会ではチェキの枚数が問題だった。1、2枚で何度も並びなおしたり、列の最後を狙う行為は嫌われるそうだ。
どうやら、最初の客である鍵開けと最後の客である鍵閉めも、仕切り役が誰に与えるか決めていたらしい。

デビューライブを気楽に応援にいったつもりだった。芽里の他にもそういったファンはいたはずだ。それでも目立ってしまったのは芽里だった。レイキへの熱量から悪目立ちしてしまったのだろう。

「もうやだ。メン地下のライブなんて絶対いかない」

こんな『現場(※ライブ)』ばかりではないのだろう。もっとライトに楽しめるグループもきっとあるはず。
だけど、『ミルkey』はそうではなかった。厳格なルールと、それを強いる環境が出来上がっている。素人が入り込めば、こうして叩かれるだけだ。

「レイキを応援したいだけなのに」

あの純真な青年を、弟みたいに大事な存在を、輝かせてあげたかった。声援を送り、見守りたかった。

「レイキ、格好よかったな……」

芽里は呟き、ベッドにつっぷした。恐怖すら感じているし、元気も出ない。
それなのに、あの日のレイキは芽里の心を照らしていた。色褪せることなく輝いていた。

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