かつて女の子だった人たちへ
デビューライブの日から10日が経った。
芽里はライブに行っていないが、『ミルkey』はこの間に4回のライブを行った。
芽里は動画サイトのライブ動画を見続けた。コール&レスポンスの口上もMIXも覚えた。きっと現場はデビューの日より何倍も盛り上がっているだろう。

「レイキ、大丈夫かな」

ベッドに横たわったまま芽里は呟く。休日にすることがない。以前は週一の楽しみで『メルティ』に行っていた。レイキと話せるひと時が、芽里の休日のすべてだった。

今はもう会えない。
あの場所に行かなければレイキには会えない。

レイキは大丈夫だろうか。ライブにものすごくプレッシャーを感じていたようだった。
芽里の顔を見て、心底安堵していた。そんないたいけな彼を、芽里は放置している。

(レイキ、私のこと、待ってるかな)

レイキが心配だった。周囲に気を遣ってばかりで、貧乏くじを引くタイプのレイキがグループ内でうまく活躍できているだろうか。デビューライブの日はファンがそれなりにいたけれど、継続してレイキを推してくれる人はどれほどいるだろう。
レイキが心細い想いをしていたらどうしよう。せめて、この声だけでも届けたい。だけど、TWXでDMを送るのも迷惑になってしまう。これから人気を獲得しなければならないのに、ファンと繋がっているのはマイナスにしかならない。

そのときだ。
スマホが震え、通知を表示する。

「DM?」

TWXを開くと、そこにはレイキ本人からのDMがきているではないか。
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