友達未満
「あ、いたいた!おまたせー!」
そのとき、大きな声が私たちの間をわって、声の方を振り向くとなっちゃんが走ってきていた。
今日も髪はお団子で、キャメルのダッフルコートの下から花がプリントされているガウチョパンツがみえた。
「なっちゃん、おはよー」
「実咲ちゃん、おはよ! 秋山くんも!」
なっちゃんの明るさで場がパッとはなやぐ。
秋山くんはどことなく緊張した面持ちをしていた。
「おはよ」
「ごめんねー、待たせちゃった! それじゃお昼でも食べる?」
「全然待ってないよー。お昼何食べよっか?」
「んー無難にハンバーガーとかかなー? 秋山くんはなにか食べたいものある?」
「俺、ハンバーガーがいいな」
秋山はなっちゃんと若干目を逸らしながらいっていたが、なっちゃんは気づくこともなく、満面の笑みを浮かべる。
「それじゃあ、ハンバーガーにしよー!」
レッツゴーと拳をあげるなっちゃんの後ろに二人でついて行く。
ハンバーガー店は昼時ということもあって混んでいたけど、運良くテーブルに座ることが出来た。
さりげなくソファ側に私たちを誘導してくれて、秋山は椅子の方に座る。
「俺、まとめて買ってこようか?」
「結構並んでるからさー、モバイルオーダーしよー。私、注文するよー。なににする?」
「あ、じゃあ私、てりやきチキンのセット。ドリンクはジンジャエール」
「俺はダブルチーズバーガーのセットで。ドリンクはコーラ」
「りょうかーい!」
なっちゃんは手際よくスマホでハンバーガー店のアプリを開いて、ささっと私たちの注文をしてくれる。
「はい。しゅーりょー」
「ありがと、なっちゃん」
「ありがとう。できたら俺が取りに行くよ」
「じゃあそれはお願いしよっかな」
手を合わせてお願いポーズをするなっちゃん。
モテる女の子ってこんな感じなんだろうな、と思う。
そしてあっという間に注文は出来上がって、秋山が取りに行ってくれた。
「ね、秋山くんって結構優しいんだね。さりげなくソファ席譲ってくれたり率先して取りに行ってくれたり」
「あ、うん」
なっちゃんがこそこそ私に耳打ちして、私もいわれてみればそうだったなと思い返す。
「人気なのもわかるわ」
「秋山って人気あるの?」
「知らないの? 私のクラスでも何人か好きっていってるのきいたよ」
「へえ……」
意外な気持ちで秋山が戻ってくるのを見ていると、私の視線に気づいた秋山が眉をひそめた。
「なに?」
「なんでもないです。ありがと」
「秋山くん、ありがとー!」
なっちゃんが明るく言うと、秋山も少し頬が緩んでいた。