友達未満

「いただきまーす」
なっちゃんは手を合わせると、ハンバーガーの袋を開けてかぶりつく。
大きな口を開けて頬張る姿は見ていて気持ちいい。
私は少し恥ずかしくてちょこちょこ食べていた。

「そういえば秋山くんって西小だよね? 小瀧とかと一緒?」
「あ、うん。そうだよ。そっか、小瀧ってバスケ部か」
なっちゃんは女子バスケ部だ。
「そうそうー! 仲良いの?」
「あー会えば話くらいはするけどな。夏村さん、仲良いの?」
「えー。まあふつう?かな? てか夏村でいいよ。夏村さんてなんかむず痒いわ」
「俺も秋山でいいよ」
「では遠慮なく。実咲ちゃんと秋山は仲良いの? 意外な組み合わせなんだけど」
突然話が私たちに飛んできて、空気になってハンバーガーとポテトを無心に食べていた私は固まった。
秋山は私をチラリとみたあと、にっこり笑った。
「最近友達になった。席が隣になったんだよな」
「う、うん」
「そうなんだー! 実咲ちゃんが男の子と仲良くしてるの初めて見たよー。だから秋山に連絡先教えていい? て聞かれた時はびっくりしちゃった」
「俺が教えてほしいっていったから」
「そういえばなんで私の連絡先なんて知りたかったの?」
さらっと聞かれた言葉に私はドキッとした。

秋山は、なんていうんだろう。

「ああ、これ、返したくて」
秋山が机に出したのは、青色のシャープペンシルだった。
「あ、これ……」
なっちゃんがそれを手に取って、秋山とシャープペンシルを見比べる。
「え、あれ秋山だったの?」
「うん」
二人の間でなにかわかりあったものがあったみたいだったけれど、状況が掴めない私は目を瞬かせた。
そんな私に気づいたなっちゃんが照れくさそうに笑う。
「これね、一年の時にあった英検で隣に座った男の子に貸してあげたんだー。筆記用具忘れたとかいうからさー」
「え? 英検で筆記用具忘れるとかある?」
思わず秋山をみると、秋山は気まずそうに目をそらす。
「筆箱忘れたんだって。だからシャーペン一本貸したの。消しゴムは無かったから後ろのやつ使ってっていって」
「へえー」
まさか試験で筆箱忘れるタイプだと思わなくて、にやにやしながら秋山を見る。
「いつもと違うカバンでいったから、入ってなかったんだよ」
秋山はぼそぼそ言い訳がましくいってたけど、なっちゃんと私は顔を見合せてクスクス笑った。
そんな私たちに向かって秋山はコホンと咳をして、なっちゃんに頭を下げる。
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