友達未満


12月にもなると、外の掃除当番はハズレだ。
私たちのクラスの外の掃除は、中庭の渡り廊下近くだ。
ほかのクラスは三人くらいで掃除をしているのに、私は一人だけ。
冬海さんと結託してこなかったんだろう。
正直私も、無視されている状況で孤独を味わうより一人の方が楽だった。

ただマフラーと手袋をしても、風は身体にまとわりつくように吹くし、落ち葉を一人で集めるだけでも大変だった。

何とかやり終えて教室に戻ると、隣の席の秋山が席につっぷしていた。
既に他のクラスメイトは帰っているようだ。

なんで学校も終わって帰れるのにわざわざ教室で寝てるんだろう?

秋山は目がくりっとしていて顔も丸いのでまだ幼い顔立ちをしていて(身長も私と変わらない)、そのわりに結構ズバズバいうタイプだ。
そして、冬海さんの好きな人でもある。

起こさないように机からカバンだけ取ろうとすると、秋山がむくりと起き上がった。
そして私にくりくりの丸い目を向けて、にっこり微笑む。

「おかえり、春川」
「え、あ、はい」
隣の席にはなったが私と秋山は今まで一度も話したことは無い。
それなのになぜか突然話しかけられて私は動揺した。
秋山は固まった私を見て面白そうにふふっと笑う。
「春川のこと、待ってた」
さらに予想外のことをいわれて頭が混乱する。

私を待ってた?
なんで??
告白なんて私なんかにするわけないし、なんか先生に言伝でもいわれたとか?

「春川さー、冬海たちにいじめられてるよね?」
容赦なく突然現実をつきつけられて、背筋に冷や汗が落ちた。

いじめ……。

「いじめというか、避けられてる、というか」
「掃除当番も押し付けられたよね? それをいじめっていうんじゃないの?」

いじめ、という単語で考えないようにしていた私にジクジクと傷をくわえていく秋山。
いじめられている、という言葉と自分の状況を一致させたくない気持ちが私に反発心を起こさせる。

「本人がいじめだと思うかでしょ」
「春川はいじめだと思ってないんだ?」

チクチクと針をさすように秋山は追い詰めてくる。
にっこり笑っているのにサディスティックだ。

「……それで、なんで私を待ってたの?」
今の状況をその言葉以外で表現する方法を私は持ち合わせてなくて、分が悪くなって話を変える。

「今の状況変えたくない?」
「……どういうこと?」
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