友達未満
教室に戻ると、冬海さんと穂高さんが私の席と前の席に座っていた。
私を見て2人は悪びれもなく手を振ってくる。
「あ、実咲ー掃除おつかれー」
「行けなくてごめんねー」
お昼休みのときの悲しい顔はもうみえない。
「あ、うん……」
にごすように笑った私は、席に座ることも出来ず、佇むしかできない。
「何立ってんの? 座れば?」
早苗ちゃんはそういうと秋山の席に座り直して、私に席に座るよう促す。
そもそもなんで2人は私の席に……?
二人は私が座ったのを確認すると、
「今話してたんだけどさあ」
と話題を振ってくる。
「最近、実咲、秋山と仲いいけどさ、うざくないの?」
「……え?」
「秋山ってさ、結構キツイことズバズバ言うし、冷めた目してるじゃん?」
どくんと心臓が痛くなって、嫌な冷や汗が背筋に落ちる。
これは、いつもの悪口が始まる合図。
いつもの私なら、にっこり笑顔の早苗ちゃんに、思ってもいないのにそれを肯定してその場を取り繕う。
でも、今日の標的は。
まさか、早苗ちゃんが好きだったはずの秋山なんて。
好きな人がいるっていえば手のひらを返す早苗ちゃんの思考が私には分からない。
「ちょっと俺だけ違うみたいな酔ってる感あるよね」
穂高さんもいつものように早苗ちゃんに同調する。
「ね、実咲もそう思うでしょ?」
そして、私にその場をやり過ごさせてくれない早苗ちゃんは、もちろん同意を求めてくる。
いつものように私は、すんなりとうなずくことはできなかった。
だって秋山は、私の友達だ。
たしかに優しくはないけど、でも秋山はいつだって自分に嘘をついていない。
そしてそんな秋山を、私はすごいと思ってるし尊敬している。
秋山はこんなこといわれたってたぶん傷つかないだろうし、私が嘘をついても呆れるだけだろうけど、自分を守るためだけにそんな嘘をつくなんてしたくなかった。
でも、無視をされたあの日々が、気が遠くなるような休み時間やグループ活動の時間が、私の気持ちを鈍らせる。