友達未満
「実咲?」
早苗ちゃんが黙っている私に笑みを保ったまま追撃をかけてくる。
ふと私の目にかばんにつけたふわうさが飛び込んできた。
”春川のこと、一人にしないよ”
そう断言した、秋山の顔が私の頭に浮かんだ。
「……そう、思わない」
秋山は受け入れたくない現実だってお構いなしにいってくるし、
傷口をつけてその上に塩をぬりたくってくるけど、
それは、いつだって自分に正直で、飾り気のない言葉で私に向き合ってくれてるからだって思う。
こんなふうに、ただただ傷つけるためだけの陰口じゃない。
「いま、なんて?」
早苗ちゃんの目がつりあがる。
唇がひくひくと動いてるのがわかったけど、私はひるまなかった。
「私は、そう思わない」
私はもう一度はっきりと大きな声でいった。
目を丸くしている二人に、私は手が震えているのがわかりながら口を開いた。
「秋山は、確かに言葉がキツイけど、いつだって自分に正直なだけだよ。私の、大事な友達をそんなふうに言わないで」
水を打ったように場が静まり返る。
その沈黙を破ったのは、クスッと早苗ちゃんが噴き出した音だった。
「実咲ってさーほんっと」
氷点下まで下がった瞳が、私を捕らえる。
「いい子ぶりっ子だよね」
標的が、私に変わった瞬間だった。
心臓が痛い。
どくどくする。
「そういうとこ、ほんとウザイわー。うちらがこういうこといってるとき、本当は参加したくないのに。みたいな顔してとりあえずその場やりすごしてたくせに。秋山だったらそれやめるんだ? ほんとは秋山のこと好きなんでしょ?」
「好きじゃない」
「実咲ってうちらのこと見下してるよね? 話しかけてあげても作り笑いしてさ」
「そんなこと、ない」
絞り出した声に、早苗ちゃんははーあとため息をついて、
「あのさあ、自分はそう思ってなくても周りがそう思ったんだったら反省するべきじゃないの? こっちは不快な思いしたけどあんたを友達にしてあげたのにさ」
早口にまくしたてた。
私は、ぎゅっと拳を握りしめて唇を噛み締める。
「ご、め……」