友達未満
「お前らもさあ、上から目線やめたら?」
私の謝罪に被さるように、頭上から声が聞こえた。
バッと振り向くと、秋山がドアのそばに立っていた。
え、なんで……?
なっちゃんを追いかけたはずじゃ……?
突然の秋山の登場に、早苗ちゃんは顔面が真っ青になった。
「秋山、これはちが……」
「見下してるとかそれ、お前らだろ。話しかけてあげたとか友達になってあげたとか、あげたあげたうるせえんだよ」
早苗ちゃんと穂高さんが気まずそうに目線を落とす。
「俺の友達、傷つけんじゃねえよ」
秋山はそういうと、私の手首を掴んでたたせて、教室からひっぱりだした。
ただ転ばないようにその背中を追いかけながら、私は胸が熱くなってぐっと涙をこらえた。
そのまま階段を登って踊り場まで来ると、手を離される。
既に掃除はみんな終わっていて、まだまばらに部活に行ったり帰る生徒が通るくらいだった。
「……ありがとう」
しばらくの沈黙の後、私はようやくそれだけしぼりだした。
それ以上なにかをいうと、こらえきれなくなって視界が滲んでしまいそうだったからだ。
「春川、やるじゃん」
秋山の嬉しそうな声に、視線を落としていた私は思わず顔を上げた。
優しい笑顔の秋山が、私を見ていた。
いつもの呆れた感じじゃない、年相応のあどけない笑顔が私の胸を締め付ける。
「ちゃんと冬海たちに思ってることいえたじゃん」
「……うん」
「かっこよかったよ」
恥ずかしげもなく褒めてくれる秋山に、私が恥ずかしくなって目線が床に落ちる。
「でも、なんで」
秋山はなっちゃんを追いかけたはずだ。
「あー、一応追いかけたけど、冬海たち残ってたし気になって戻ってきた。夏村の方は、俺の出番なかったし」
「どういうこと?」
「既に先客がいたから」
先客……?
そういえばなっちゃんのすぐあとを追いかけていた男の子がいたことを思い出した。
「なんかうまくまとまってたし、特に何も言わず戻ってきた」
「それって……」
「簡単に言うと失恋って感じ?」
軽い感じで言う秋山に、私は弾けるように秋山を見る。
秋山は苦笑していて、私はどんな顔をすればいいのかわからなかった。