友達未満

「俺、今の春川の方が好きだよ」

「……えっ!?」

「前はずっと暗い顔しておどおどしてたけど、今は吹っ切れた感じがして」

あ、人としての意味か。
好きって言葉だけに馬鹿みたいに反応してしまった自分が自意識過剰すぎる。

「秋山に、鍛えられたのかも」
「どういう意味」
「心、いつもズバズバ抉られてたから」
「え?」
「……え?」
秋山と顔を見合わす。
心当たりがないというような顔を見て、私は思わず声を上げて笑ってしまった。

「自覚ないんだ」
「自分に正直に生きてるから」
それはこないだ私が早苗ちゃんたちにいっていたことをふざけていってるんだとにやにやしている秋山を見て思った。
「そこが秋山のいいところでもあるよ」
予想していなかった言葉なのか、にやついていた秋山が一瞬頬を赤くして、顔を背けた。

……照れてる?

なんだか恥ずかしいことを言った気がして、私も無言になって一緒に持ってきていたコップの水を飲み干した。


日も落ちてきたのでその後は帰ることにして外に出る。

「今日は誘ってくれてありがとう。楽しかった」
「おう」
名残惜しい気もしながら、引き止める理由も浮かばなくて。
秋山とそれじゃ、と別れようとした時。

「あ、」

ショッピングモール横のクリスマスツリーが点灯した。
We Wish You a Merry Christmasの音楽と共に、緑や赤、黄色に光り輝くツリー。
いつもは素通りしてたのに、なんで今日はこんなにも綺麗に見えるんだろう。


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