友達未満
「……俺も、春川に感謝してるよ」
イルミネーションに見惚れていると、秋山の言葉が耳に届いて驚いて秋山をみる。
秋山はイルミネーションに目を向けたままだった。
「夏村にシャーペン返せたし、興味なかった少女漫画の映画、結構面白かったし」
「なにそれ。そんなに面白かったなら漫画かしたげるよ」
「それに」
秋山と私の目が合う。
「あのとき追いかけたから、自分の気持ちもわかったし」
心が、揺れた。
「それって、どういう……」
思わずそう聞いてしまった私に、秋山はいたずらっ子のようににやりと口角をあげた。
「さて、どういう意味でしょう」
どくん、どくんとうるさいくらい心臓が鳴る。
ああ、私、きっと。
気付かないふりをしてたけど、きっと。
秋山のことが、
好きだ。
「さて、帰るか」
音楽が鳴り止んで、イルミネーションが一度消灯したタイミングで秋山がそういった。
話を切り上げられてしまうと、もう私も何も聞くことが出来ない。
「また来年だな」
そっか。もう冬休みだし、秋山とは今年会うことはないんだ。
そう思うと名残惜しくなった。
「秋山」
歩き出そうとした秋山を呼び止める。
イルミネーションがジングルベルの音楽とともにまた点灯されて、私たちの横顔がキラキラ光る。
「また来年も、同じクラスになれるといいね」
秋山はわずかに目を見開いて、歯をみせて笑った。
「そしたら、一人になんないしな」
理由は、それだけじゃないんだけど。
今は、そう思われてもいっか。
願わくば、来年も秋山の隣にいられますように。
私はクリスマスツリーを見上げてサンタさんに心の中でお願いするのだった。
fin.