友達未満



次の日席に着くと、冬海さんたちが近寄ってきた。

「実咲おはよー」
「あ、おはよう」
にこにこ笑顔の冬海さんたちにぎこちなく私も笑いかける。
昨日までは無視してたくせにこの変わり身の速さにはついていけない。
「秋山もおはよー」
「おはよ」
ここぞとばかり秋山にも挨拶する冬海さんたちに秋山は少し面白そうな顔をしていた。
「珍しいね、冬海たちが仲良くしてるの」
秋山の言葉に、冬海さんたちは顔を見合せて私の腕をとった。
「仲良くなったんだよねー。実咲、話してみると気があって。ね?」
「あ、う、うん」
おどおどと話を合わせる私に秋山はふうん。とにやにや笑っていた。

わかってて聞いてる。
性格悪いな、秋山。

「だからこれからはちょくちょくくるわー」
冬海さんがそういうと、始業のチャイムが鳴った。
そのまま自席にかけていく彼女たちを秋山はふっと鼻で笑った。
「わかりやすいやつら」
「……」
「春川はこれでよかったの?」
「え?」
「あいつらの友達になってそれでよかったの?」

まただ。
私を見透かすようなその目は、なにもかもわかっているみたい。

「う、うん」
ごまかすように頷くと、秋山はふうん、とつぶやいて、もう私に興味をなくしたように前を向いた。

あいつらの友達になってそれでよかったの?

その言葉が私の心を揺らす。
無視されるよりきっといいって思ってるのに、心はざわざわとしていて落ち着いてくれなかった。
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