友達未満



「宮下さんっていつも人を馬鹿にしてる感じでムカつくよねー」
「わかるわー。なんかお高く止まってる感じ」

まただ。
私の胃がキリキリと痛む。

冬海さんたちは、たまにお昼休みの時間に私の席に来るようになった。
そして秋山がどこかへいくと(友達と消えたり次の体育のために着替えに行ったり)、こうしてだれかの悪口が始まる。

「今日だってさー、数学の小テストの答え合わせ、隣の人とやってっていわれたから宮下さんとしたけど、宮下さん全問正解で、すごいねーっていったら、そんなことないよ。数学苦手だしっていわれて。全問正解できないうちはなんなんだよってなるよね」
「苦手っていうわりに、高得点で名前呼ばれてるくせにねー!」
「謙遜のつもりかもしれないけどうざいよね」
「実咲もそう思うでしょ?」
どきりと嫌な感触が身体中に広がる。
私は極力会話に参加しないけど、傍観者でいることを許してはくれない。 
いつも冬海さんは私にも笑顔で同調を求めてくる。
私が答えに窮していると、少しづつ笑顔が崩れていくのがわかって、私は曖昧に頷いてしまう。
「そ、そうかも」
私の言葉を受け取ると、でしょー!とまたテンションが上がって盛り上がる。
穂高さんも、中瀬さんもそれに同調する。
冬海さんが満足すると話題はアイドルの話かだれそれの恋愛話になる。
そうなるまで私は胃がキリキリするのに耐える。

きっとこの悪口が発展して私は無視をされるようになったんだろうなと痛みに耐えながら思う。
なんで無視されたのか、ずっと考えてたけど、きっかけなんてくだらなかったのかもしれない。

悪口が嫌だと思うのに、また自分に矛先が向くことが怖くて、私は結局流されてしまう。
そんな私自身が、私は一番嫌いだった。

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