友達未満

おでかけ


「実咲、どこかいくの?」
「うん、友達と遊んでくる!」
私はお母さんの言葉に笑顔で返すと、久しぶりに家をワクワクした気持ちで出た。

「夏村さんと、出かけることになったんだけどさ」
秋山にそう声をかけられたのは、木曜の授業と授業の合間の時間だった。
「え、あ、すごいね」

なっちゃんに連絡先を教えていいか聞いた日に、秋山には連絡先を教えてあげた。
連絡先を知ってこんなにも早くなっちゃんと会う約束をとりつけるなんて、秋山ってやっぱりなっちゃんのこと好きなんだと思った。
そういえば連絡先を教えると告げたときも、どことなく嬉しそうだったし。

「部活たまたま休み被ってるから、今度の日曜になったんだけど、春川も来れる?」
まさかの発言に私は目を丸くする。
「え、なんで?」
「夏村さんが、春川も一緒だったら嬉しいなって」

なっちゃんがそんなことを言ってくれたことが嬉しくて、私は涙が出そうだった。
このクラスでは、私の友達なんて、誰一人いないんだから。
……あ、でも一応今秋山は友達なのか。

「私、邪魔じゃない?」
一応遠慮した方がいいんじゃないか、という気持ちは湧く。
「来たいなら来ればいんじゃない?」
あっけらかんと秋山は気にした様子もなくそういって。
「……じゃあ、いこう、かな?」
「おっけ。じゃあ夏村さんにそういっとく。12時に駅の噴水前ね」
「うん」
秋山は要件だけいうと、次の授業の用意を出して机に突っ伏して寝だした。
私は久しぶりに友達と遊べる約束ができたことが嬉しくてしばらくその余韻に浸っていた。

そんなことがあって、今日を迎えた。
なっちゃんと遊ぶのも、夏休みくらいが最後だったから久しぶりだ。

待ち合わせの駅に着くと既に秋山が立っていた。
秋山はグレーのパーカーに黒のアウターをきて、紺色のジーンズを履いていた。
そういえば、何気に男の子と出かけるなんて初めてかもしれない。

秋山と視線があって、よっと手を挙げる。

「秋山、早いね」
「早く来るにこしたことはないかなって」
「そっか」
隣で並ぶと、秋山って私と一緒くらいの身長だと気づく。
「冬海たちとは仲良くやってんの?」
「あー……たぶん?」
あれから冬海さん……早苗ちゃんたちは私のことを無視しなくなったし、仲間にもちょくちょくいれてくれるようになった。
「秋山のおかげで無視とかはなくなったよ。ありがとう」
無視がなくなっただけでもだいぶ心はマシになった。
他の子たちもぎこちなくだけど、冷たい顔はしなくなったし。
「……俺はなんもしてないけどな」
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