利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった
 ……それに。

“なによ”
“なによなによ”

「んんんんんんんんん」
「そんなに頑なに……?」

“こんな気持ちになるなんて知らなかったんだけど”

「んんんんんんんんんんんんんんん」
「拒絶しなくても、いいじゃない……って、リネア、俺はっ」


“相手から拒絶されるのがこんなに辛いだなんて”

 ――私は、全然知らなかったから。


 ゆらりと視界が歪み、世界が滲む。

 
 ロベルトなんて、別に好きじゃなかったはずなのに。
 お互い利害一致しただけのお飾り婚だと思っていたはずなのに。
 幼い頃の思い出だって、別に美しい恋物語でもなんでもないのに。


 それでもロベルトから婚約の申込みに飛び付いたのは。
 ぐうたらな私がなんだかんだでロベルトについて行ったのは。
 拒絶されたことよりも、“私が”拒絶したとロベルトが傷付いたことが辛いのも。


 私の口を塞ぐロベルトの手のひらを軽く引くと、いとも簡単に解放される。


「ロベルトと同じ気持ちかなんてわからないわよ」

 だって、恋なんてそんなのしたことないもの。

「だけど、同じ気持ちならいいなって思うの」
「リネア……?」
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