利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった
「婚約申込みの返事、『喜んで』って書いたでしょ。お受けしますじゃないわよ、喜んでって私は書いたの」

“お飾りでも良いと思ったの”

 だってロベルトは、地味な私でも、ダメな私でも、ぐうたらな私でもガッカリなんてしないから。
 いつも『私』を真っ直ぐ見てくれる人だったから。


「やり直せるならやり直したい。貴方を傷付けたあの夜を」

 毎日ぎゅうぎゅうに予定を詰めるんじゃなく、少しずつ時間を重ねるように思い出を作りたい。

 だってこの1ヶ月の休みだけじゃなく、私たちにはまだまだずっと沢山一緒に生きる時間があるのだから。


 再びロベルトへとゆっくり顔を近付ける。
 勢い余ってぶつからないように、慎重に。
 
 ロベルトの手で防御されないかと一瞬不安になったが、どうやらその心配は杞憂だったようで。


「……ん」

 ちゃんと触れる彼の唇は、緊張で少しかさついているようだが思ったよりも柔らかく、そして私の胸を焦がすように熱くさせたのだった。
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