利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった
 そんなクラーラに再び大丈夫だと伝えるように大きく頷いた私は、机の引き出しから便箋を取り出した。
 

「今までの私には婚約者がいなかったからね! いつまでも家にいれるわけじゃないしガッカリされるとわかっていながらワンチャン狙って会ってはいたけど」
「そんなもの狙わないでください」
「もう離さないわよ、ロベルト! 私とお飾り婚して貰うんだからね!」

 ふは、ふははと不気味な笑いを漏らしながら、私は取り出した便箋に『喜んで!』とシンプルに一文だけの返事を書いたのだった。



 それから婚姻までの期間はあっという間だった。
 
 本来ならば顔合わせをし、互いを知るための婚約期間を過ごす(今までの私はこの顔合わせでナカッタコトになってきた)のだが、幼少期とはいえ互いに顔見知りであったこと、また両親たちも付き合いのある者同士だったことが後押しをし、婚約申込みから三ヶ月という異例の速さで婚姻を結ぶことになったのだ。


「……だからって、一度も会いに来ないってどうなのでしょうか」

 結婚式の当日、私の髪を結いながらクラーラが不服そうに唇を尖らせる。

“まぁ、仕方ないわよね”
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