14年目のクリスマス
森の奥に建てられた家
「幸祈、起きなさい。
もう着いたよ」
助手席で眠っていた
幸祈(サキ)が、声に反応して目をゆっくり開けた。
「パパ、着いたの?」
サキは眠気を含んだ、ぼんやりとした声で聞いた。
目を擦り、アクビを噛みしめている。
まだ夢現のようだ。
「ああ。着いたよ。見てご覧」
車の外を指さすと、
サキは冷気でくもった車の窓ガラスを手でふき取り、
外の様子を確認した。
「わぁ!すごい雪!」
サキは窓ガラスに張りつく。
そして、外の景色に感激の声を上げたあと、
車の外に飛び出して行った。
「コラ。ちゃんとコートを着ないと風邪ひくよ」
車のキーを抜き、かけていた眼鏡を外してダッシュボードに仕舞う。
自分の分と、サキの分のコートを手にすると、
追いかけるように車の外に出た。
寒い─…。
身が凍るような寒さだ。
車から出た途端、
突き刺さるような冷気に晒された。
コートを羽織り、身を縮める。
この寒さは今も変わってないようだ。
目の前に建つこの家も、以前と比べてちっとも変わってない。
白と茶色を基調した外壁
木製の玄関ドア
ブランコのある庭
─ようやく、また此処に来ることが出来た…─
14年という歳月をかけ
やっと──……