14年目のクリスマス
サキの料理は全部美味しかった。
サーモンのハーブ・ソテー
ガーリーックとタイムのパケット
水菜とルッコラのサラダ
オニオンスープ
丸こげになったローストチキンも、焦げた部分を取りのぞいて食べた。
料理を口に入れた瞬間、不安そうに顔を覗き込んできたサキに
「美味しいよ」と伝えると、安心したように綻ばせる顔が可愛らしかった。
「パパ!ケーキ食べましょ!」
最後のデザート。
クルミ入りのガトーショコラ。
これは家政婦の田中さんがクリスマスプレゼントにと、焼いてくれたものだ。
上にかけられた真っ白い粉砂糖が、外に降る雪を思わせた。
部屋の電気を消し、ローソクに火を灯す。
薄暗い空間に、ゆらゆらと揺れるローソクの小さな炎が幻想的だ。
「サキ。ローソクの火を消して。
お願い事をするのを忘れずにね」
サキは目を瞑り、暫く手を合わせたあとローソクに息を吹きかけた。
照明を戻したあと、ケーキを切り分ける。
「やっぱり田中さんお手製のケーキは絶品ね!
買ったやつよりも美味しいもの」
ケーキを頬張りながらサキが言った。
「ああ。でもサキの料理も美味しかったよ。
そうだ、クリスマスプレゼントを渡してなかったね」