14年目のクリスマス
自分はブラックコーヒーを片手に、文庫本のページを開く。
ずっと読みかけのまま放置されていたミステリー小説。
読書は趣味だった。
しかし、こんなにゆっくりと本を読むのはいつぐらい振りだろうか。
ただひたすら
文字の羅列を目で追いかけていく。
数年前まではこの単調な動作さえもが、煩わしく思えた。
1つの行為に没頭することなど出来なかった。
自分の心は、他のことに囚われていたし、仕事に打ち込むことでそれを紛らわせようとしてきたから…。
だが、ようやく同じページに挟まれていた栞を移動させることが出来そうだ。
穏やかで、満たされた気分でいっぱいになる。
「ふあぁぁ…」
ロッキングチェアーに座ったサキから、大きなアクビが漏れた。
テレビも何もない空間にいることは、サキにとっては退屈な時間でしかないのだろう。
まだ遊びまわりたい年頃なのだから、それは当然のことだ。
開いていた文庫本を静かに閉じ、ソファーから立ち上がる。