ヒーローはキミだから

14.救いの握手

「こんなあたしでよかったら……」
 おずおずと先輩のほうに手を伸ばすと、先輩はあたしの手をギュッ! とにぎりしめた。
 
 うわあ、力強くてあったかい手。
 不安とつらさでいっぱいだった心が、だんだんとやわらいでいく。
 身体じゅう、一気にエネルギーが注がられたみたい。

「じゃあ、決まりだね。えっと、キミは――」
 そうだ! あたしってば、まだ先輩に自己紹介してなかった。
「弓佳です。藤堂 弓佳」
「教えてくれてどうもありがとう。ずっと気になってたんだ。それじゃ、今日からよろしく。弓佳ちゃん!」
 先輩は、とってもうれしそうにあたしの名前をささやいた。
 鏡を見なくても、自分の顔がポッと赤くなったのが分かる。
 心臓がドキドキとさわがしくなってる。

 こらこら、かんちがいしちゃダメ自分!
 冷静に、冷静に。
 先輩はあくまでも「彼氏役」。
 ほんとうに告白されたわけじゃないんだから。
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