ヒーローはキミだから
25.もう逃げないで
先輩は、開いたままのドアをながめて。
「ちょっとお説教オヤジみたいになっちゃったかな? だけど、好きなひとがいるって、ほんとうはとても幸せなことだから。想いが伝わらなくて、悲しい気持ちやもどかしい気持ちになることはあるけど、そのひとが自分にとって大切な存在だってことは、ずっと変わらないからね」
そう言うと、ギュッとあたしの手をにぎりしめた。
「わ……っ!」
心臓がトクンと脈を打つ。
「今度は逃げないでよ。弓佳ちゃん、オレよりはるかに走るの早いんだもん。こないだも、あの日も、いつだってオレはキミに追いつけなかったんだから」
あの日?
ポカンとしていたあたしの口に、露原先輩が
「はい」
と、なにか放りこんだ。
サクサクッとした歯ごたえに、コーヒークリームの甘さ。
あたしの大好物『ロゼ』のサンドクッキーだ。
「おいしい?」
「もちろん、おいしいですけど……」
すると、先輩は満足そうにほほえんで。
「ずっと、うちの店のクッキーを好きでいてくれてありがとう」
「え?」
うちの店のクッキー?
ということは、露原先輩ってもしかして……。
「あの日、キミがオレに教えてくれたんだよ。好きって気持ちはそんなカンタンには揺らがないってこと」
「あたしが?」
「ちょっとお説教オヤジみたいになっちゃったかな? だけど、好きなひとがいるって、ほんとうはとても幸せなことだから。想いが伝わらなくて、悲しい気持ちやもどかしい気持ちになることはあるけど、そのひとが自分にとって大切な存在だってことは、ずっと変わらないからね」
そう言うと、ギュッとあたしの手をにぎりしめた。
「わ……っ!」
心臓がトクンと脈を打つ。
「今度は逃げないでよ。弓佳ちゃん、オレよりはるかに走るの早いんだもん。こないだも、あの日も、いつだってオレはキミに追いつけなかったんだから」
あの日?
ポカンとしていたあたしの口に、露原先輩が
「はい」
と、なにか放りこんだ。
サクサクッとした歯ごたえに、コーヒークリームの甘さ。
あたしの大好物『ロゼ』のサンドクッキーだ。
「おいしい?」
「もちろん、おいしいですけど……」
すると、先輩は満足そうにほほえんで。
「ずっと、うちの店のクッキーを好きでいてくれてありがとう」
「え?」
うちの店のクッキー?
ということは、露原先輩ってもしかして……。
「あの日、キミがオレに教えてくれたんだよ。好きって気持ちはそんなカンタンには揺らがないってこと」
「あたしが?」