おばけなワタシとキラキラのきみ
***

「おつかれ」
「……おつかれさまです」
宙先輩は、それから毎日のように閲覧室に来た。

この部屋に誰かがいることに最初はとまどったけど、先輩はいつもわたしから少しはなれた席でしずかに本を読んでいるから、だんだんそれが自然になって気にならなくなった。

「空っていつもここで何してんの?」
だけどときどきこうやって話しかけられる。そのたびに少しだけ緊張してしまう。

「えっと、宿題とか、小説とか、読書とか」
それにアユちゃんの作文とか。

「えらいな、宿題」
「家より集中できるので」
声が小さくて本当にかっこわるい。

「小説も家より集中できるからここで書くの?」
先輩の質問に、コクッとうなずく。

「パソコンもほとんど独占できるし、わからないことも、すぐに図書室とネットで調べられるので」
「ああ、だからか」
先輩は何かに納得したけど、わたしはよくわからずにキョトンとした。

「空の小説ってなんか細かいところがちゃんとしてて、説得力があっておもしろかったから」

そう言って先輩がわたしに微笑みかけた瞬間、心臓がトクンと音を立てた。アユちゃんにも負けないくらいきれいな笑顔。
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