ホストに恋して破滅した私ですが、高級キャバ嬢になってイケメンオーナーから愛されています。
「おすすめの本を教えてあげようか?」
「嬉しい! だけど絵本にしてね? 活字には慣れていないから」

そんなことを言って笑いを誘う余裕だってある。
ヒナはすっかり関心してしまった。

自分にとって関心のない話題を長時間話されるのは苦痛以外のなにものでもないのに、ちゃんと聞いているし、話題を変えることもない。

お客さんが話したいがままにしているのだ。
お客さんの方はちゃんと自分の話を聞いてくれているので満足そうに帰っていった。

「すごい……」
一緒にお見送りをしたヒナは思わず呟く。

「え、なにが?」
嬢がキョトンとした顔をヒナへ向ける。

「さっきの接客見てました。本に興味がないのに、よく最後まで話を聞けますね」
「あぁ、そのこと。ああいうときは適当に相槌をうっておけばいいの。相槌をうつのも大変ならお客さんが言った言葉をそのまま返すだけ」
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