ホストに恋して破滅した私ですが、高級キャバ嬢になってイケメンオーナーから愛されています。
これは全部……作り物の優しさだ。
カズの本物の優しさじゃない。

だけどそのぬくもりは傷心の日奈子の胸に容赦なく突き刺さってくる。
「わ、私のことを警察に突き出さないの?」

「ん? あぁ、別に。俺怪我とかしてないし」
カズはけろっとした調子で言う。

そんなことでいいのかと思うが、カズのことだ。
似たような経験を何度もしているのかもしれない。

「それよりさ、最近俺店で調子悪いんだ。ランキングも落ちてきて困ってるんだよな」
「そう……」

お客さんの人生を破滅させるようなやり方をしているのだから、ランキングが下がるのも頷ける。
けれどカズは納得していない様子だ。

「だからまた店に来てよ。日奈子ちゃんなら俺をナンバーワンにできるでしょう?」
甘い言葉。
昔の日奈子なら、つい頑張ってしまうような誘い文句。
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