ホストに恋して破滅した私ですが、高級キャバ嬢になってイケメンオーナーから愛されています。
☆☆☆

店から出るといつも夢の中を漂っているような浮遊感がある。
まだまだ夢から覚めたくない。

この夢はきっと永遠に続いてくれるはずだ。
そう思って、冬の夜の寒さだって気にならなくなる。

日奈子が現実へ引き戻されるのはボロアパートへ戻ってきたときだった。
暖房もなくガランとした部屋に1人でいると嫌でもこれが現実なのだと突きつけられてしまう。

そして部屋に残っているのは残高ゼロ円になった通帳だった。
「どうしよう。これで本当にお金がなくなっちゃった」

残っているのはギリギリの生活費のみ。
少しの贅沢も許されない状況になっていることに気がついて寒気が走った。

「お米、まだあったっけ。おかずはどうしよう。なにか残ってたっけ」
ぶつぶつと呟きやがら冷蔵庫の中を確認してみるけれど、モヤシが一袋に鮭のフレークがひとビン残っているだけだ。

これで来月の給料日まで過ごすのはさすがにきつい。
だけどお金はもうない……。
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