財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「あまり……最初からうまくいっていなかったんです」
「そうだったのか。お前付き合いだした頃、笑顔が見えて驚いたんだ。幸せそうだったじゃないか」
「最初、秘書課に慣れなくて辛かった時期に声をかけて優しくしてくれたのは彼だけでした。話す人もいなくて嬉しかったんです。皆さんの話を聞いていると私と住む世界が違うし、怖くて誰にも話しかけられなかっただけなんですけどね」
「お前は入ってきたとき、美人なのに笑わないクールビューティーと言われてたぞ。俺のこと無愛想なんてよく言えたもんだ」
「今思えば、斉藤さんは専務がいずれ出世すると思っていたようでしたので、そのせいで私に声をかけたのかもしれません」
私はいいたくない話を口に出して、サングリアをおかわりして一気飲みした。甘くて飲みやすいが、結構アルコール度数が高いと気づいたのは酔いが回り始めてからだった。
「馬鹿馬鹿しい。そんな訳あるか。お前を落としたって斉藤がしょっちゅう自慢していると辰巳から聞かされて頭にきてたんだ」
吐き捨てるように目の前の崇さんが言った。