財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
そう言うと、ペットボトルを私にくれた。私は首をすくめて彼を見ながらお礼を言って水を飲んだ。
「……はあー。美味しい」
「香月。明日は休みだし、ゆっくり泊まっていけ」
「い、いいえ。そんな恐れ多い、か、帰ります……」
「寝顔が可愛いから、つい食っちまおうかと思ったが、残念……次にもし同じ事があったら、据え膳は有難く頂くからな。お前がいいというなら、今日これから美味しく頂くのもやぶさかじゃないぞ」
隣に座ってきてフェロモン満載の笑顔で迫る。私は両手を自分の身体に巻き付けると、下を向いた。そっと頭を撫でてくれた。
「この状態でタクシーに乗るときっと気持ち悪いぞ。さっきも気持ち悪いって言ってた。無理しないで寝ていけ。ここはスイートだ。部屋なら有り余ってる。ベッドもたくさんあるから大丈夫だ」
「そ、そんな……」
言われてみれば、とても素敵な部屋だった。間接照明になっていたのであまり見ていなかったのだ。