財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「慌てるな。このまま寝てろ。トイレは出て左側の扉だ」

 あっけにとられている私をおいて出て行こうとする。

「あ、あの……」

「どうした?」

「あ、ありがとうございました。ご迷惑おかけしてすみません……」

 ゆっくりとこちらへ戻ってくる。ベッドに乗り上げて私の目の前に来ると、顎を捕らえた。

「少しよくなったのか?それならお互い酔っ払っていることだし、宿泊費として()()だけもらいたい」

 そう言って私の唇に人差し指を載せてきた。あっけにとられていたら、目の前の美しい顔が近づいて来て、唇の端に温かいものがチュッとついた。

「目をつむれよ」
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