財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 ガタンと音がした。彼が起きたんだろう。トイレに行って戻ってきた。私はそっと部屋を出ると、彼に声をかけた。

「おはようございます」

「ああ、早いな。眠れたか?」

 眠そうな顔。なんか可愛い。前髪が垂れてる。

 こちらを見る眼を見て、夕べのことを少し思い出した。そうだ、夕べこの人とキスを……。

 前を見られなくて目線を落として返事をした。

「ええ……本当にありがとうございました。あの、私……帰ります」

「何もそんなに急がなくてもいいだろ」

「あ、いえ、やっぱり着替えたいし、実家なので心配していると思います」
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