財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

急な引き継ぎ

 翌週の月曜日。朝から彼と顔を合わせた。極力何もなかったかのように振る舞おうと決めてきたのだ。

「週末はごちそうさまでした。そして大変ご迷惑おかけしました。申し訳ございませんでした」

 デスク前で頭を下げた。彼は書類から目を上げていたずらっぽい目を輝かせた。

「ああ。今度は東京でまたゆっくりと俺のオススメの場所へ飲みに行こう。また酔い潰れてもいいからな。今度は俺のマンションへ招待してやる。ゆっくり泊まりに来い」

「は……え?」

 私が困惑の表情を浮かべたのを見て、嬉しそうに見てる。

「ふっ。面白い顔……」

「朝から、変な冗談はやめてください!」

「あはは」

 あのホテルでのキスは何だったんだろう。酔いに任せてキスしただけかもしれない。私も意識を失うほど飲んでしまったんだから、連れて行かれて何かされたとしても自業自得だった。それなのに彼はキスで止まってくれた。

 止まってくれたのは彼の思いやりだったのか、いや、総帥にそういう関係にはならないと言ったんだから、身体の関係なんてセフレしか道はない。キスで終わってよかったのだ。
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