財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
 
 なにしろ、出社してすぐに支社長に捕まって、頼みたい案件がどうしてもあるから、もう少し本部へ行くのを遅らせて欲しいと言われたのだ。

 少なくとも、今日は引き継ぎで手が一杯なのでできませんが、御曹司に聞いて下さいと話したところだった。

 崇さんは支社長の様子を見て、勘のいい人だからきっと何か気づいてる。それでこんな風に下手に出たんだろう。こうなったら支社長は何も言えなくなる。

 私は支社長が可哀想で、彼に向かって頭を下げた。

「支社長。本当によくして頂いたのに、こんな中途半端で去ることになり、申し訳ありません。支社長のお仕事は、佳奈美さんにまたお願いします。それと、坂本課長の部長昇格は決まりですか?」

 支社長が崇さんを確認するように見ると、崇さんが頷いた。

「うちのプレゼンが通ったそうだ。さすがは坂本課長。というわけで、彼は部長職へ昇格させる。急いで彼に仕事を割り振って俺は帰る」

「それなら、支社長。坂本新部長のお仕事は難波さんがやります。佐々木部長のことも彼女でしたので……完璧に今日一日かけて引き継ぎいたしますので、ご安心ください」
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