財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
支社長はため息をついた。そして、じろりと恨みがましげに御曹司を見上げた。
「色々ひどいですよ、崇さん。このままだと総帥から私が叱られます。こんなはずじゃありませんでした。香月さんはとても優秀だから支社でずっとお預かりしますとこの間も言ったばっかりで……」
「支社長、悪いな。でも心配無用だと言っただろ。俺は父に香月のことを話してからここへ来たんだ。今はとにかく支社を挙げてせっかく坂本君が獲得したプロジェクトをやってもらわないと困る。香月ひとりいなくなったくらいで、どうにかなるのか?」
「そうじゃありませんよ。あの美味しいコーヒーも、完璧な書類も今日までかと思うと……総帥に頼まれなくても、君にはずっといてもらいたかったんだ。香月さん、本当なんだよ」
「ありがとうございます、支社長。難波さんに、コーヒーの入れ方も完璧に引き継ぎしますから大丈夫です」
苦笑いした支社長は頼んだよというと御曹司に頭を下げて出て行った。
その日の夜。佳奈美さんと坂本君、難波さんの四人だけで、急だったのに内緒の送別会をしてくれた。
「カンパーイ!香月さん、お世話になりましたー!」