財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「それにしたって、強行するのがまずおかしいですよね。大体私ひとりなんて無理です。特に日本へ戻られたんですから、辰巳さん抜きでやっていけないと思います」

「いや、きっとそうでもない。アメリカでもお一人で向こうの支社長と回っておられた。自分でアポを取ってね」

 信じられない。少し話していたが、本当だったんだ。

「俺も考えを改める時期に来たようだ。それに……いくら総帥が頑張っていても、遠からずここはいずれ崇さんのものになる」

「……辰巳さん……」

「とりあえず、わからないことがあれば何でも聞いてくれ。今日からお前にやらせるつもりだろう」

「一人では絶対に無理です。辰巳さんとやりたいとお願いしますから待っていて下さい」

「気持ちは嬉しいが、何もしなくていいぞ。彼には何か考えがあるんだろう。うっすらそうじゃないかと思うこともある」

「……え?」

「お前に新しい役員を付けなかったのは、崇さんからそうするように頼まれていたからだ。崇さんは戻り次第、香月を秘書にするため、他の役員に取られないよう誰にも付けるなと命令していったんだ」
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