財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「それホントですか?だって、新藤さん退職願出したとき何も言いませんでしたよ。お預かりしますって……」

「お前がまさか崇さんの秘書になる話を聞かされていなかったなんて知らなかったらしい。いずれ崇さんの秘書をやる気があるなら残るだろうし、辞めたいと思うならまず御曹司秘書なんて無理だと思ったらしい」

 そうだったんだ。みんな大事なことは口に出さず、内密にしているから、秘書課ってまれにこういうことになる。秘密だらけだからなんだよね。

 複雑な顔をしていた私を見て、辰巳さんは砕けた笑顔を見せた。

「昨日、崇さんにメールで聞いたが、お前から半年時間をもらったとか?」

「あ、はい。半年経って嫌なら支社に戻っていいと言ってくれたんです」

「……はー。お前も相変わらずの馬鹿だな」

「え?」

「いや、こっちのこと。まあ、頑張れ。そろそろ出社されるぞ」

「あ、はい。以前と同じで問題ないですか?」

 辰巳さんがお休みの時に少しだけ彼の秘書をしたことがある。朝のルーティーン、昼、帰りなど色々ある。
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