財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「……はい。お久しぶりでございます。これからまたよろしくお願い致します」
「いやはや驚いたね。君も浮き沈みの激しい人生で大変だね。まあ、頑張って。いつまでやれるかわからんけどね」
部下も部下なら、上司も上司。どっちもこんなだものね。この人の担当にならなくてよかった。
いつものミルクティーを買いに廊下の端で自販機に向かっていた。すると、またもや会いたくない人に声をかけられた。
「おい、菜々。急に戻ってきたと思ったら、どういうことだよ?随分と出世したじゃないか……。話が違うぞ」
「斉藤さん。お久しぶりです」
「なんだよ、他人行儀だな。今は誰もいないんだから名前で呼べよ」
「もう、ただの先輩です」
「相変わらず可愛くねえな、お前は、だからダメなんだよ」
伸吾が私の腕を引いた。
すると後からいつもの香りが急にして、腰を引かれた。伸吾の手が離れた。
「ああ、斉藤君。せっかく立候補してくれた総帥の秘書の件だけどね、新藤さんが辰巳にしたいそうだ。君には秘書室長が監査担当役員をお願いしたいそうだ」