財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
彼は私の腰に手を回し、自分の横に囲い込むと、じろりと伸吾を睨んだ。伸吾は私の顔と彼の顔を見比べながら怯えた顔をした。
「そ、そうですか……」
「それと、ね……ひとつハッキリ言っておくことがある。香月はもう君とはすっぱり切れたんだから、君も名前を呼び捨てにしたりしてあまり甘えないことだな。彼女は次期総帥の俺の秘書になった。もう少し付き合い方を考えた方がいいね。彼女は俺の管轄下だ。何かあれば容赦しない。そのつもりでいろ」
最後のひと言を言い終えると、驚いて固まっている伸吾を残して私の腕を引いて部屋へ戻る。
「ミルクティーならあとで奢ってやる……戻るぞ。あいつ、本当に嫌な奴だな」
そう言うと、私の顔をのぞき込んだ。私はどうしてあんな人だと気づけず今まで付き合っていたのか考えると本当に自分が嫌になった。
「まさか未練があるんじゃないだろうな?」
「え?あるわけありません。後悔ならありますけど……ただ自分の男を見る眼のなさにがっかりしていただけです。このままだと、私あっという間にひとりで三十になりそうです」
「……馬鹿だな」
「え?」