財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「お前に声をかけたがっていた奴らは、専務や俺の手前遠慮してたんだよ。それをあの男は……ずうずうしいんだよ。あいつは秘書に不向きだ。いずれ実務へ戻すから安心しろ」
「……慰めてくれてありがとうございます。お仕事で恩返しが出来るように頑張ります」
「お仕事以外でも恩返ししてほしい。こういうお前とふたりの時間は大切にしたい。たわいない話をしたり、冗談を言ったりする時間。俺には大事なんだ。お前はそうじゃないのか?」
またのぞき込むように膝を折って私の顔を見る。恥ずかしい。その綺麗な顔で見られると、ドキドキする。
「首元から赤くなってる。いい傾向だ」
首筋を指で指した。近い、近いからやめて……。意識しないようにしているのに、困る。
「だから、からかうのはやめて……ください」
「やだね。お前とこうやって……いるのが楽しいんだよ。前からそうしたかったんだ」
「え?」
「いつも日傘専務と冗談を言い合って笑ってたじゃないか。うらやましかった。俺にもその笑顔を向けて欲しかった。今は俺のことを見て、笑っていて欲しいんだよ」