財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
彼の優しさを勘違いしないようにと努力しているが、そういう目を見ると嬉しくて期待してしまいそうになる。でもダメだ。
「この距離感に慣れて欲しい」
「……秘書の距離感とは違います。は、離れて下さい」
「俺はこれから場合によってはこういう距離感になるから、このくらいで驚かれたら困るんだ」
あっけにとられている私を見て、プッと吹いて笑っている。また、冗談。本当にたちが悪すぎる。彼の胸を押して、壁から身体を離して下がって距離を取る。
すると腕を引かれてまた囲い込まれた。
「逃げるな。何もしない。慣れろと言っている。内密のはなしも多いから、小さい声で指示することもある。至近距離に慣れてもらわないと困るんだ」
「……ダメです、無理です」
「じゃあ、ダメじゃない関係になるか?俺はいつでもいいぞ。なにしろ、一度キスした仲だ」
そう言うと、おでこに軽くキスを落とした。びっくりした。私は彼を突き飛ばした。
「ダメです!総帥に秘書を辞めさせられます。お願いです……」
「ふざけすぎたな。すまない。でも大丈夫だ。心配するな。絶対辞めさせたりしない」