財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
彼の秘書になって二週間。あっという間だった。結局海外に戻らず、国内の重要取引先に総帥継承のことを内密に話して回るため、外出も多くなった。
月曜日の朝のことだ。
「香月、聞きたいことがある。先週の笹倉建設へのお持たせの菓子だが、笹倉社長の奥様の好物で限定品だと社長にいわれて驚いた。面識があったのか?」
「専務と笹倉社長は昔から面識がおありでした。社長の奥様があそこの商品を好きだというのは、笹倉社長からたまたまお聞きしました。私もあそこの店が好きだったので、新作菓子は私が予約購入してお渡ししていました」
「香月さんが秘書ですかと笹倉社長から即座に聞かれたんだ。驚いたよ。しかもプレゼンの書類もそうだ。売上の対比率とかお前が入れて作っていたというのは本当か?」
「あれは……何回か作ったあとで聞かれたので、最初から表に組み込んで入れておいた方が役に立つだろうという単純な考えです」
「営業三部の部長が褒めていたのはそういうこともあってのことなんだな。臨機応変に出来る。お前ほど、俺の秘書に向いた女はいない。初の女性秘書にピッタリだ」
「……ありがとうございます」