財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「週末、本邸に帰ったんだ。今話したことを父さん達に話して聞かせてきたぞ。いかにお前がすごいかを自慢してきた」
「!」
な、何を言ってるの?総帥ご夫妻に私の話をした?や、やめて……。
「それで母がお前に会いたがってる。今度、ウチに一度来い。いい傾向だ。母を味方に付けたら父なんて全く怖くない。もう安心だ」
「もう安心って……」
「俺の予定通りに着々と進んでいる」
嬉しそうに手を合わせている。
「そうだ、今度一度こっちでも飲みに行こう。支社で約束したよな」
「出張も予定されていますし、しばらくはお忙しいですよね。もう少し落ち着いてからにしませんか?」
「……何というか、お前ってそういうところ……」
「はい?」
「いや、いいんだけどさ。香月って俺のこと……あんまり男として意識してないよな」
「当たり前です!……崇さんは……タダの上司です……」
人の苦労も知らないで何を言い出すんだろう。どれだけ頑張って意識しないようにしてると思ってるんだろう。距離がとにかく近すぎる。正しくない。むっとした私を彼はじっと見ている。
「タダの上司……」