財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「あの、昨日目を通して下さいとお願いした繊維部門の稟議書終わりましたか?」
「あ、それはあと少しだ。昼休みまでに何とかすると伝えておいてくれ」
「……大丈夫なんですか?このあと会議もあります」
「俺をなめるなよ。やるときはやる」
「普段はやらないって事ですか?どんなときもやる気でお願いします」
私も遊ばれてばかりはいられない。言い返してみた。
「言うねえ……辰巳みたいだ。やっと専属秘書っぽくなってきたな。じゃあやる気を見せてやるよ。稟議書を三十分で仕上げるから、しばらく電話は繋ぐなよ。終わったら会議の書類を見せてくれ」
「かしこまりました」
私は自分の小部屋に戻った。書類を机において突っ伏した。
「はあー。もうなんなのよ。人の気も知らないで……」
彼との上司と部下としてのあうんの呼吸というか、リズムが出来てきている。もう、彼の秘書を辞めたいとは思わない。今は、一日でも早く彼の助けになる秘書となるためたくさんのことを吸収し、覚える時期だ。
日傘専務に心の中でお伝えする。