財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
『ようやく水やりをはじめました。まだ、肥料をあげられるほど私に力がありませんが、鋭意努力中です』と……。
彼の秘書となって、あっという間に数ヶ月が経った。
「どうなの、菜々?御曹司秘書、慣れた?」
昼休みのランチで久しぶりに時間が合ったので真紀と外で食事をした。
秘書は休み時間も上司のその日の予定で繰り上げることが多い。
今日はお互いボスが外出になることがわかっていたので約束したのだ。
ここ数ヶ月本当に無我夢中だった。出来なくて落ち込むこともあるが、常に彼が側で大丈夫だと励ましてくれた。
「うん、何とかやってる。でもその都度辰巳さんに聞いてやっているから、いちいち聞くなと最近は嫌がられているくらいよ」
真紀はスパゲッティをフォークでかき回しながら、こちらを見て言う。
「まあね、最初は怖いよね。今までのやり方があるはずだし、ボスの機嫌ってあるじゃない。私のとこは機嫌が結構上下するからさ。会議や外出後は顔色うかがって毎回疲れる」
「機嫌を秘書にぶつけるのはやめて欲しいね」
「全くだよ。私もやり返したくなるもの」