財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「そんなことより、真紀は最近、武田君とはどうなのよ」
恥ずかしそうにする真紀。彼女は同期の武田君と恋愛中だが、どうやら年齢もあるから結婚も視野に入れているとこの間は言っていた。
「うーん。来月、私誕生日なの。もしかすると……かな」
「そっか。そうなんだ。よかったね、それは楽しみね」
すると、はっとしたような顔をして私を見た。
「そうだ、言おうと思ってたんだ。彼から聞いたんだけど、営業二部って金融関係の取引窓口でしょ。噂になっているらしい。黒沢さんのお父さんが正式に彼女を婚約者にして欲しいと総帥に言ったらしいよ」
「……え?」
「秘書課にはそんな噂来てないからおかしいと思ってね。しかも、あの黒沢さんが黙っていられるかな?もしかして総帥が断ったのかなと思ったんだけどね」
「……それはどうだろう。私も知らない」
私は下を向いてじっと考えていたら声をかけられた。
「ねえ菜々」
「ん?」
「……そろそろ告白された?」
私は食べていたものが喉へ詰まりそうになった。
「……っ!けほっ」
水を飲んだ私を見てニヤリと目の前で真紀が笑っている。