財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「素直になりなよ。崇さんは菜々を守ってくれると思うけどね。大体さ、辰巳さんを総帥に付けたって事は辰巳さんが総帥を操ることも出来るんだよ。辰巳さんはあんた達の一番の理解者でしょ。そう考えたら、菜々の味方は結構な権力者だらけだよ」

「そう、かな……」

 コーヒースプーンをこちらに向けた彼女はうなずいた。

「でしょ?私だって微力ながら応援してるんだからさ、何かあれば言ってね。斉藤さんはいなくなったし、残るは黒沢さんだよ」

 そう、伸吾は崇さんのせいかもしれないが、先月異動になった。ちょっと心が痛かったけど、顔を合わせなくて済むからほっとしている。

「伸吾のことは……もしかすると崇さんがやったと思う。ちょっと罪悪感もある」

「なーに言ってんのよ。あの人、すでに営業部で相当噂になってるらしいよ。あっちこっちに声かけて本性丸見え。菜々とのことは話したらまずいと思っているみたいだから、それだけはよかったけどね」
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