財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「そんなわけないです」

「香月は担当者に変な動物のあだ名を付けて覚えてるんだよ。面白いんだぞ」

「もう……やめてください!恥ずかしい……誰にも言わないでって言ったじゃないですか」

 私が彼に近寄って手を上げたら、彼が笑いながら私のその手をつかんだ。みんながこちらを見て固まった。まずい……。

「……こら、香月。ふざけてないですぐに戻りなさい」

 辰巳さんが入ってきて目配せをした。助け船を出してくれたのだ。新人の女性秘書や黒沢さんがすごい目で私を見ている。

「ちょっと、崇さんいいですか」

 辰巳さんが彼を引っ張って廊下へ出る。バタンというドアが閉まる音。三人で彼の部屋へ戻った。辰巳さんと崇さんはソファに座る。

「再来週ですが、清家のパーティーがあるらしいです。ご存じでしたか?」
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