財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
食事の後、父の書斎に呼ばれた。母に心配をかけないため二人にしたんだと思った。何かあるに違いない。
「菜々。研究費を融資してくれていた榊原の系列銀行から突然呼ばれてね」
「何があったの?」
父はため息をついた。
「簡単に言うと、どうやらうちから手を引きたいようだ」
「どうして?」
嫌な予感がした。
「そこの銀行の頭取室へ呼ばれたんだよ。黒沢頭取という人だ」
「黒沢頭取って……」
「心当たりがあるようだな。一人娘が本部秘書室に御曹司の縁談候補として入っていると言われたよ」
「専務秘書をされている人です」