財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 父の優しさが身に沁みた。だが、父のことは黒沢さんの反撃ののろしでしかなかった。

* * * *

 清家財閥の招待状が週明けに来た。彼に見せた。

「ああ、招待状か。来たんだな。来週金曜日の夜、船上パーティとクルーズ……君には同行してもらう。俺のパートナーを務めて欲しいんだ。ここに来る人は顔を覚えておいた方がいい」

「わかりました」

「その日は夕方からいつものところへお前も連れて行く。予約しておけよ。俺とお前。あそこで全部着替えたり出来るから何も持たずに行っていい。ただ、今回は少しめかし込んでいかないとな。お前は美人だから少しやるだけできっと映える」

 そんなこと真顔で言われた事なんてない。恥ずかしくて真っ赤になる。すると、顎をつかんで私を熱い目で見ている。

「楽しみだ」

 専務の話が本当なら、彼は大分前から私を秘書にしたがっていて、気にかけてくれていたということだ。それは今の彼を見ればうなずける。私を特別だと思わせてくれるだけの優しさを与えてくれている。
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