財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 招待状は机の中のファイルにストックしてあるが、念のためコピーを取ってからしまっている。ご本人へお渡しすることもあるので、私が中身を把握するためだ。

 前々日の夕方、招待状を崇さんへ事前にお渡ししたほうがいいか確認するため、机の中のファイルを捜した。すると、どれだけ捜しても見当たらない。血の気が引いた。

 確か、ICチップの入ったカードも入っていて、船室が割り当てられていたのだ。重要なお客様には船に泊まれるよう手配しているのでカードを同封された方は必ずお持ち下さいと招待状には書かれていた。彼にはそれが入っていたのだ。

 どれだけ捜してもない。しまってあった他の招待状などは全て入っている。つまり、それだけがなくなったのだ。

 私はコピーしたときに持ち帰るのを忘れたのかとコピー機の周りを捜してみたが見当たらない。コピー機は御曹司の秘書部屋にあるので、わざわざ秘書課でコピーしてくることはない。

 他人が入る余地はないはずだ。
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