財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「いや、調べたがそれもない。あの金庫は鍵を開けるときに承認が必要で、開ける度システムに記録がつくんだ。それくらい厳重に重役の机や金庫の鍵は管理されている。つまり考えられるのはお前の鍵を使って開けたということだ。ロッカーから盗まれたとか、普段机のどこにあるか知っていてそこから盗んだ、そのどちらかだな」

 すると、崇さんの社内電話が鳴った。

「はい。ああ……どうだった?そうか、わかった。連れてきてくれ」

 彼が受話器を置いて、ため息をついた。

「黒沢さんが盗んだことを自供した」

「ええ!?」

「辰巳が問い詰めたようだ。何しろ、先ほど証拠を清家財閥から送ってもらった。逃れようがないから観念したんだろう。あっけなかったな。少し泣き騒いだようだが、落ち着いたら今からここへ来る。香月お前、ついたての横に隠れていろ」

「どうしてです?私、どうして盗んだのか、彼女に直接聞きたいです!」
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